ホーム > お知らせ > 一人親方に関する判断基準(事例1)

一人親方に関する判断基準(事例1)

一人親方の労働者性判断事例

 

(事例1)大工A

1 事業等の概要

(1)事業の内容

住宅建築工事

(2)大工の業務の内容

住宅の床、壁、天井等の建付けを行う。発注者から材料の供給を受けて、当該建築現場内において刻み、打付け等の作業を行う。
2 当該大工の契約内容及び就業の実態

(1)契約関係

書面契約はなく、口頭による。受注部分は、発注者自身が請け負った住宅の一区画である。報酬は3.3㎡当たり5万円を基本とし、工事の進捗状況により、毎月末を支払日としている。

(2)業務従事の指示に対する諾否の自由

Aは継続的にこの発注者から仕事を受けており、断ると次から仕事がもらえなくなって収入が途絶えることを恐れて、事実上仕事の依頼を断ることはない。しかし、仕事を断ろうと思えば断る自由はあり、都合が悪ければ実際に断ることもある。
また、例えばAが刻みを終えると、次は打付けをするようにという業務従事の指示があり、Aはこれを拒否できない。

(3)指揮命令

発注者はAに仕様書及び発注書で基本的な作業の指示を行い、さらに作業マニュアルで具体的な手順が示されている。また、定期的に発注者の工事責任者が現場に来て、Aらの作業の進捗状況を点検している。
また、他の現場の建前への応援作業を指示される場合があり、この場合には、発注者から日当の形で報酬の支払を受ける。

(4)就業時間の拘束性

Aは、原則として毎日発注者の事務所へ赴き、そこで工事責任者の指示を仰いだ後に現場に出勤している。また、作業を休む場合には、発注者に事前に連絡をすることを義務付けられている。勤務時間の指定はされてないが、発注者に雇用されている他の労働者と同じ時間帯に作業に従事しており、事実上毎日午前8時から午後5時まで労務を提供している。

(5)代替性の有無

Aが自己の判断で補助者を使用することは認められていない。

(6)報酬の性格

報酬は請負代金のみで、交通費等の経費はすべてAの負担となるが、他の現場へ応援に行く場合は、発注者の雇用労働者と同程度の額が日当の形で支払われる。

(7)その他

材料加工用の工具は、釘等を含め、発注者側に指示されたものをAが用意するが、高価な物はない。
工事途中に台風などにより破損した箇所は発注者側の経費により修理される。
社会保険、雇用保険には加入せず、報酬についてはA本人が事業所得として申告をしている。

3 「労働者性」の判断

(1)使用従属性について

①業務従事の指示に対して諾否の自由を有していないこと、②業務遂行について、かなり詳細な指示を受け、本人に裁量の余地はあまりないこと、③勤務時間についても実質的な拘束がなされていること、から使用従属性があるものと考えられる。

 

(2) 労働者性の判断を補強する要素について

工具等を自ら負担していること、社会保険の加入、税金の面で労働者として取り扱われていないことは、「労働者性」を弱める要素ではあるが、上記(1)による「使用従属性」の判断を覆すものではない。また、代替性が認められていないことは、労働者性を補強する要素となる。

 

(3)結論

本事例の大工Aは、労働基準法第9条の「労働者」であると考えられる。

 

向田社会保険労務士事務所 建設業あゆみ一人親方組合 労働保険事務組合ゆとり創造協会

電話する 0120-417-631(無料) お申込み