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一人親方に関する判断基準(事例2)

一人親方の労働者性判断事例

(事例2)型枠大工B

1 事業等の概要

(1)事業の内容

中層ビル建築工事

(2)大工の業務の内容

ビルの梁、柱、壁等の形にベニヤ板等により型枠を作成する。当該部分に、生コンを流し込むことにより梁、柱等が建造されていく。材料は発注者から供給を受ける。ベニヤ等の刻み、打付けは当該建築現場において行う。

 

2 当該大工の契約内容及び就業の実態

(1)契約関係

書面契約はなく、口頭による。受注部分は、ビルの建築現場における一区画を15名のグループで請け負ったもの。報酬は3.3㎡当たり15万円。支払は、随時請求することも工事の進捗状況により可能であるが、工事終了後、一括してグループ全体として受ける。Bはグループの代表として報酬を受け、グループの構成員にはBから分配をする。

(2)業務従事の指示に対する諾否の自由

複数の発注者から仕事を受けており、仕事の依頼を断ることもある。

(3)指揮命令

作業方法等に関しては、発注者から、他工程との関連から、施工時期や安全施工に関する指示を受けることはあるが、その他の施工方法については、状況を見ながら自己が判断して決定する。
また、他の現場の建前への応援作業を依頼される場合があるが、この場合の報酬は、基本的に他のグループとの間でやりとりされる。

(4)就業時間の拘束性

当該工事内の始業、終業時間は一応定められているが、Bはこれに拘束されることはなく、工事の進捗状況により、発注者と相談の上作業時間が決定される。朝礼や終業時のミーティングに参加することはあるが、義務付けられてはいない。

(5)代替性の有無

施工に当たり、B自身が作業することは契約内容とはなっておらず、Bが自己の判断で補助者を使用することは自由である。

(6)報酬の性格

報酬は請負代金のみで、交通費等の経費はすべてBの負担となる。
なお、グループ内の他の構成員への報酬支払責任は最終的にはBが負う。

(7)その他

材料加工用の工具は、高価な据置式の工作機械を含めてBらが用意したものを使用する。
社会保険、雇用保険には加入せず、報酬については事業所得として申告している。

 

3「労働者性」の判断

(1)使用従属性について

①仕事の依頼についての諾否の自由はあること、②業務遂行について、裁量が広く認められており、指揮監督を受けていることは認められないこと、③勤務時間が指定、管理されていないこと、④自己の判断で補助者を使用することが認められており、労務提供の代替性が認められること、から使用従属性はないものと考えられる。また、報酬が出来高払となっており、労務対償性が希薄であることは、当該判断を補強する要素である。

(2)労働者性の判断を補強する要素について

高価な工具を自ら負担していること、社会保険の加入、税金の面で労働者として取り扱われていないことは、「労働者性」を弱める要素である。

(3)結論

本事例の型枠大工Bは、労働基準法第9条の「労働者」ではないと考えられる。

 

参考 労働基準法研究会労働契約等法制部会

向田社会保険労務士事務所 建設業あゆみ一人親方組合 労働保険事務組合ゆとり創造協会

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