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安全管理よくある質問
詳しい人に編集していただきました。事故防止の参考になればと思います。
移動式クレーン
移動式クレーンで作業をする場合、どのような場合に鉄板を敷くのか
クレーン則第70条の3では、地盤が軟弱であったり、地下の工作物が損壊するおそれのあること等の場所では、移動式クレーンの使用を禁止しています。なお、通達(平4・8・24 基発第480号)では、地盤が軟弱であったり、地下の工作物が損壊するおそれのあること等の等には法肩の崩壊が含まれる。ただし、転倒防止のための必要な広さ、強度を有する鉄板などを敷設した場合に限って移動式クレーンの使用が認められています。
同通達で、「必要な広さ及び強度を有する鉄板等」とは、沈下することがない「広さ」と変形しない「強度」が求められています。
さらに同通達では、「鉄板等の等には、敷板又は敷角が含まれる。」また、クレーン則第70条の4では、「事業主は、アウトリガーを使用する移動式クレーンを用いて作業を行う時は、当該アウトリガーを鉄板等の上で当該移動式クレーンが転倒するおそれのない位置に設置しなければならない」と定めています。
同通達で、「転倒するおそれのない位置」とは、「鉄板等の中央部分をいう。」クレーン組立作業で作業指揮者を選任する義務はあるのか
クレーン則第33条第1項で、クレーンの組立てまたは解体作業を行う時の措置として、
1 作業を指揮する者を選任して、その者の指揮のもとに作業を実施
2 作業を行う区域に関係労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示する
3 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想される時は、当該作業に労働者を従事させないまた、同条第2項では、1の「作業を指揮する者」に行わせなければならない事項として、
1 作業の方法及び労働者の配置を決定し、作業を指揮する
2 材料の欠点の有無並びに器具及び工具の機能を点検し、不良品を取り除くこと
3 作業中、安全帯等及び保護帽の使用状況を監視すること
などが掲げられています。フックの外れ止め装置の使用義務はあるのか
クレーン則第64条では『移動式クレーンについては、厚生労働大臣の定める基準(移動式クレーンの構造に係る部分に限る)に適合するものでなければ使用してはならない』となっています。
ここでいう『厚生労働大臣の定める基準』とは、移動式クレーン構造規格のことですから、外れ止め装置を取り付けていない移動式クレーンは、使用することが出来ないということになります。
そして、クレーン則第66条の3で、『事業者は移動式クレーンを用いて荷をつり上げるときは、外れ止め装置を使用しなければならない』と規定しています。
移動式クレーンを使っての作業、つり上げ荷重と定格荷重の違いは
クレーン則第1条でそれぞれ定義づけられています。まず、『つり上げ荷重』ですが、ジブの長さを最短にして、傾斜角を最大(垂直に近い状態)にしたときに、つることのできる最大の荷重をいいます。この場合の荷重には、フック、グラブバケットなどのつり具の重量が含まれます。
次に、『定格荷重』とは、ジブの長さとジブの傾斜角度の組み合わせにより定格荷重が決まる。この場合の荷重には、フック、グラブバケットなどのつり具の重量に相当する荷重を控除した荷重をいう。
つまり、『定格荷重』は『つり上げ荷重』と違い、移動式クレーンのジブの長さや角度に応じて、多様に変化することになる。
この定格荷重が変化することを忘れて、移動式クレーンの傾斜角度やジブの長さを変えたために、つり荷が定格荷重を上回り、クレーンが転倒するという災害につながる。
そのため、クレーン則第69条では、「移動式クレーンにその荷重を超える荷重をかけて使用してはならない」とされている。
さらに、クレーン則第70条では、『移動式クレーンについては、移動式クレーンの明細書に記載されているジブの角度(つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンにあっては、これを製造した者が指定したジブの角度)の範囲を超えて使用してはならない』としています。
また、クレーン則第70条の2で『事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行うときは、移動式クレーンの運転者及び玉掛けをする者が当該移動式クレーンの定格荷重を常時知ることができるよう、表示その他の措置を講じなければならない』としている。
なお、移動式クレーンを用いる作業のために、荷をつらずに、ジブを起伏、旋回させることも当該作業に含まれる。
以上から、移動式クレーンに掛かる荷重がアウトリガーの張り出し幅に応じた定格荷重を下回ることが条件となります。
安衛則第161条によると、
1 積卸しは、平坦で堅固な場所においておこなうこと
2 道板を使用する時は、十分な長さ、幅及び強度を有する道板を用い、適当なこう配で確実に取り付けること
3 盛土、架設台等を使用する時は、十分な幅、強度及びこう配を確保すること2に出てきた「十分な」と「適当なこう配」について通達(昭47・9・18 基発第601号の 1)では、道板は車両系建設機械の重量を支えることが可能な積載荷重を有し、さらにクローラーの幅以上の幅を有することが必要になります。
なお、「安全な範囲のこう配」は、通達に基準はありませんが、車両系建設機械のテキストなどには「こう配を15度以下にする」との基準があります。
さらに、移送作業では、作業指揮者を定め、作業区域内への関係作業者以外の立入りを禁止する。合図を行う者を定めて、その者の合図によって移送作業を行うなどの措置も必要となります。
移動式クレーンのアウトリガーを最大限に張り出せないときの措置は
クレーン則第70条の5により、アウトリガーは最大限に張り出すことが原則となります。しかし同条のただし書きの部分で、作業上のスペース上、移動式クレーンのアウトリガーを最大限に張り出すことができない場合の措置として「張り出し幅に応じた定格荷重を下回ることが確実に見込まれるときは、この限りでない」とあります。この点について通達では、
1 アウトリガーの張り出し幅に応じて自動的に定格荷重が設定される過負荷防止装置を備えた移動式クレーンを使用するとき
2 アウトリガーの張り出し幅を過負荷防止装置の演算要素として入力する過負荷防止装置を備えた移動式クレーンにおいて、実 際のアウトリガーの張り出し幅と同じまたは張り出し幅の少ない状態に過負荷防止装置をセットして作業を行うとき
3 移動式クレーン明細書、取扱説明書等にアウトリガーの最大張り出しできないときの定格荷重が示されており、実際のアウト リガーの張り出し幅と同じまたは張り出し幅の少ないときの定格荷重表または性能曲線により、移動式クレーンにその定格荷 重を超える荷重が掛かることのない事を確認したとき
なお、移動式クレーンを用いる作業のために、荷をつらずに、ジブを起伏、旋回させることも当該作業に含まれる。以上から、移動式クレーンに掛かる荷重がアウトリガーの張り出し幅に応じた定格荷重を下回ることが条件となります。
安衛則第161条によると、
1 積卸しは、平坦で堅固な場所においておこなうこと
2 道板を使用する時は、十分な長さ、幅及び強度を有する道板を用い、適当なこう配で確実に取り付けること
3 盛土、架設台等を使用する時は、十分な幅、強度及びこう配を確保すること2に出てきた「十分な」と「適当なこう配」について通達(昭47・9・18 基発第601号の1)では、道板は車両系建設 機械の重量を支えることが可能な積載過重を有し、さらにクローラーの幅以上の幅を有することが必要になります。
なお、「安全な範囲のこう配」は、通達に基準はありませんが、車両系建設機械のテキストなどには「こう配を15度以下にする」との基準があります。
さらに、移送作業では、作業指揮者を定め、作業区域内への関係作業者以外の立入りを禁止する。合図を行う者を定めて、その者の合図によって移送作業を行うなどの措置も必要となります。
移動式クレーンの作業で強風時の作業中止とはどのような場合か
クレーン則第74条の3で、「強風のため、移動式クレーンに係る作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を中止しなければならない」と定めています。ここで「強風とは、10分間の平均風速が毎秒10m以上の強風が吹いているときは移動式クレーンに係る作業を中止しなければならない。
また、通達で危険が予想されるときとは、「風によりつり荷が振れ、または回転し、労働者に危険を及ぼす恐れがあるとき、定格荷重近くの荷をつり上げる作業で風圧によりつり荷の半径がが増大し定格荷重を超える荷重がかかる恐れのあるとき等」をいいます。
また、クレーン則第74条の4において「労働者の危険を防止するための措置」として、移動式クレーンにおいてジブを堅固な物に固定すること、ジブを収納すること等のほか、移動式クレーンの転倒により危険が及ぶ恐れのある範囲内を立ち入り禁止とする措置が含まれている。
車輌系建設機械
ドラッグショベルの移送作業を行う安全面のポイントは
安衛則第161条によると、
①積卸しは、平坦で堅固な場所においておこなうこと
②道板を使用する時は、十分な長さ、幅及び強度を有する道板を用い、適当なこう配で確実に取り付けること
③盛土、架設台等を使用する時は、十分な幅、強度及びこう配を確保すること②に出てきた「十分な」と「適当なこう配」について通達(昭47・9・18 基発第601号の1)では、道板は車両系建設機械の重量を支えることが可能な積載過重を有し、 さらにクローラーの幅以上の幅を有することが必要になります。
なお、「安全な範囲のこう配」は、通達に基準はありませんが、車両系建設機械のテキストなどには「こう配を15度以下にする」との基準があります。
さらに、移送作業では、作業指揮者を定め、作業区域内への関係作業者以外の立入りを禁止する。合図を行う者を定めて、その者の合図によって移送作業を行うなどの措置も必要となります。
フォークリフト作業には必ず作業指揮者が必要か
フォークリフと運転手には技能講習(最大荷重1トン以上)や特別教育が必要になります。また、フォークリフトは『車両系荷役運搬機械等』に含まれるため『作業計画』の作成が必要です。
『作業指揮者の選任』に就いて、安衛則第151条の4において「車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない』となっています。
しかし、通達(昭53・2・10 基発第78号)では、単独でフォークリフト作業を行う場合は、作業指揮者を選任しなくてもよく。また、床面からの高さが2m以上のはいのはい付け、はい崩しの作業を行うときは、はい作業主任者を選任しなければなりませんが、この者が作業指揮者をあわせて行える場合は、作業指揮者を兼ねることがあります。
フォークリフトのツメにかごを設置して作業者を乗せて昇降させてもよいか
安衛則第151条の14により、主たる用途外の使用の制限を定めています。
つまり、主たる用途以外の用途としての『荷のつり上げ』や『労働者の昇降』などを禁止しています。しかし、『労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない』とあります。通達(昭53・2・10 基発第78号)で、『労働者に危険を及ぼすおそれのないときとは、フォークリフト等の転倒のおそれがない場合で、パレット等の周囲に十分な高さの手すり若しくはわく等を設け、かつ、パレット等をフォークに固定すること又は労働者に命綱を使用させること等の措置を講じたとき』としています。
貨物自動車の荷台に搭乗し移動することは禁止なのか
安衛則第151条の72で、『あおりのない』貨物自動車の荷台に労働者を乗せて走行することは禁止されています。
しかし、安衛則第151条73で、『あおりのある』貨物自動車であって、一定の安全措置を講じた場合に限り、荷台に労働者を乗せての走行を認めています。具体的な措置として、
①荷の移動による労働者の危険を防止するため、移動により労働者に危険を及ぼすおそれのある荷について、歯止め、すべり止めなどの措置を講ずること
②荷台に乗車させる労働者に次の事項を行わせること
・あおりを確実に閉じること
・あおりその他貨物自動車の動揺により労働者が墜落するおそれのある箇所に乗らないこと
・労働者の身体の最高部が運転者席の屋根の高さ(荷台上の荷の最高部が運転者席の屋根の高さを越えるときは、当該荷の最高部)を超え て乗らないことつまり、あおりのある貨物自動車で、かつ上記のような墜落防止措置を講じた場合に限り、荷台に労働者を乗せて走行が可能といえる。
貨物自動車からの荷の積み卸し作業で昇降設備を設けなければならない要件は
安衛則第151条の67、同条2項により、最大積載量が5トン以上の貨物自動車での荷の積み卸し作業を行う場合には『昇降設備』の設置が必要となり、作業者もこの昇降設備を使用して作業を行わなければなりません。
そこで、どのようなものが『昇降設備』に該当するかの特段の定めはありません。しかし、「安全に昇降するため」の条件を満たすことが必要です。
また、安衛則第151条の74、同条第2項において、最大積載量が5トン以上の貨物自動車での荷の積み卸しを行うときは保護帽の着用が必要になります。
ただし、通達(昭43・1・13 安発第2号)で、労働者が積み卸し作業等のために荷台又は積み荷の上に乗る必要がない場合等のように労働者が墜落による危害を受けるおそれがない場合には保護帽の着用は除外されています。
フォークリフトの作業計画とは
安衛則第151条の2で、車両系荷役運搬機械等とは、
①フォークリフト ②ショベルローダー ③フォークローダー ④ストラドルキャリヤー ⑤不整地運搬車 ⑥構内運搬車 ⑦貨物自動車 があります。安衛則第151条の3第1項では、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類および能力、荷の種類及び形状等に適する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならないと定めています。
さらに、安衛則第151条の3第3項では、作業計画を関係労働者に周知させなければなりません。この周知について通達で、口頭による周知で差し支えないが、内容が複雑な場合等で口頭による周知が困難なときは、文書の配布、掲示等によることとされています。
フォークリフト始業前の具体的な点検項目は
安衛側第151条の25によると、
①制御装置及び操縦装置の機能
②荷役装置及び油圧装置の機能
③車輪の異常の有無(タイヤを含む)
④前照燈、後照燈、方向指示器及び警報装置の機能フォークリフトから運転者が離れる場合にとる措置
安衛則第151条の11で、
①フォーク、ショベル等の荷役装置を最低降下位置に置く
②原動機を止め、かつ、停止の状態を保持するためのブレーキを確実にかける等の車両系荷役運搬機械等の逸走を防止する措置を講じるまた、通達で②の「ブレーキを確実にかける等の「等」には、くさび又はストッパーで止めることが含まれる」とある。
ドラッグショベルによる荷のつり上げ、法的に問題はないか
安衛則第164条第1項で車両系建設機械の主たる用途外使用を禁止していま す。しかし、同条2項において一定の条件下において、用途外使用か認められています。具体的には、
●荷のつり上げの作業を行う場合であって、次のいずれにも該当するとき
①作業の性質上やむをえないとき又は安全な作業の遂行上必要なとき
通達で、「車両系建設機械を用いる掘削作業の一環として土砂崩壊による危険を少なくするため、一時的に土止め用矢板、ヒューム管等のつり上げ作業を行う場合、作業箇所が狭あいなため、移動式クレーンを搬入して作業を行えば作業場所がより錯綜し、危険を増すと考えられる場合②アーム、バケット等の作業装置に次のいずれにも該当するフック、シャックル等の金具 その他のつり上げ用の器具を取り付けて使用するとき
(1)負荷させる荷重に応じた十分な強度を有するものであること
(2)外れ止め装置が使用されていること等により当該器具からつり上げた荷が落下するおそれのないもの
(3)作業装置から外れるおそれのないものであること●荷のつり上げの作業以外の作業を行う場合であって、労働者に危険を及ぼすおそれのないとき
掘削溝内での作業で土止め用機材を使用できるか
使用されている枠材が、土砂崩壊の対策として適切な「土止め支保工」にあたるか がポイントです。土止め支保工は、地質や掘削溝の深さ、工期などによって必要な強度は異なるでしょう。
したがって、まずは枠材の持つ強度を知ることです。その上で、実作業の前に地質などを調査して、強度的に安全が保てることがわかれば問題ありません。
また、枠材の設置後に作業員が溝内に入る手順がよい。車両系建設機械の積み下ろし作業で転落防止措置のポイントは
安衛則第161条では、
①積み下ろしは平坦で堅固な場所でおこなうこと
②道板を使用するときは十分な長さ、幅及び強度を有する道板を用い、適当な勾配で確実に取り付けること
③盛土、仮設台等を使用するときは、十分な幅、強度及び勾配を確保すること
といった項目をあげています。過去の災害事例をみても、所有する道板の大きさが足りないことを認識しながら無理に作業を進め転落するケースがある。
ドラックショベルを使う作業で誘導者の配置義務はあるのか
安衛則第157条2項及び通達により、路肩の防護措置(転倒転落防止のために
ガードレールの設置)がない、標識等で明示されていないといった、当該車両系建
設機械の転倒または転落により労働者に危険が生ずるおそれがあるときは誘導員
を選任し配置することが必要になる。ただ、転落防止ということで考えると、安衛則第157条1項にて、
①当該車両系建設機械の運行経路について路肩の崩壊を防止すること
②地盤の不同沈下を防止すること
③必要な幅員を防止すること
といった措置を講じるよう規定しているので、まずは設備・作業環境面の対策が先
で、事前の策として誘導員の配置を考えるべきである。なお、ドラックショベルと労働者の激突を避けるために安衛則第158条第1項で、
「車両系建設機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系建設機械に接触す
る事により労働者に危険が生じる恐れがある箇所に、労働者を立ち入らせてはな
らない。ただし、誘導員を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させる時は
この限りではない」とあります。
安全衛生管理体制
派遣社員の安全衛生管理は派遣元と派遣先のどちらがおこなうか
派遣先と派遣元の事業者は、派遣社員の安全衛生について連絡・調整を密にして、統括管理しなければなりません。そのため、派遣元における連絡責任者や派遣先での連絡責任者を現場に配して、安全衛生に関する細かい連絡・調整をおこないます。
次に安全衛生管理は、現場でおこなう作業に危険あるいは健康障害の防止対策が必要なので原則として派遣先がおこないます。
その他、雇入れ時、定期健康診断などの一般健康診断は、派遣元事業場が実施し、それらの健診結果にもとづいて適切な事後措置を講じなければなりません。なお、特殊健康診断は派遣先事業場に、その義務が課せられます。
また、安全衛生教育は、雇入れ時の安全衛生教育は派遣元事業場で、作業内容変更時教育は派遣先事業場が行います。
安全管理者の代理者は資格が必要か
安衛則第4条2項により、安全管理者が旅行や疾病などのやむを得ない事由によって、職務をおこなうことができない場合は「安全管理者の代理人の選任」が必要になります。
そこで、この代理者の「資格」については、特段の定めがありません。安全管理者の資格を持ったものがいればその者を代理者として選任することが望ましい。しかし、いない場合は、安全に関して可能な限り知識や経験を持った者の中から代理者を選任すべきでしょう。
近隣にある関連会社で安全管理者や衛生管理者の兼任は可能か
安衛法第11条を見ると「事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、・・・・のうち安全に係わる技術的事項を管理させなければならない。・・・」と定めています。
また、安衛法第3条では「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と・・・・労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。・・・」と事業者等の責務を定めています。
ここで言う事業者とは「事業を行う者で、労働者を使用する者をいう」と安衛法第2条第3号で定義されています。
法人企業であれば当該法人、個人企業であれば事業経営主ということになります。
つまり、労働災害防止に努め、労働者の安全衛生を確保することを責務としています。結論として、近隣にある関連会社は別法人ということになり、安衛法でいう「事業者」が違ってきますので安全管理者、衛生管理者の兼任はできないということになります。
ですから、関連会社が独自に「安全管理者」「衛生管理者」を選任になければなりません。
ちなみに安全管理者、衛生管理者は選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任することと定められています。
安全衛生委員会の議事録に盛り込むべき内容は
安衛法第17条で安全委員会の実施を、安衛法第18条で衛生委員会の設置を規定し、安衛法第19条で安全衛生委員会を設置することを規定しています。
さて、この安全衛生委員会における議事録の作成については、安衛則第23条第3項で『委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを3年間保存しなくてはならない』と定めています。
議事録の作成・保存により、決定した事項が確実に実行されたか否かの確認が出来ることや、その時々の事業場の安全衛生上の問題点などを明確に出来るというメリットがあります。
この議事録に記載すべき内容ですが、安衛法上では具体的な定めはありません。ただ、大まかに分けると、
①開催日時 ②場所 ③出席者(数) ④議題(伝達事項や審議事項など) ⑤具体的な決定事項 ⑥その他の留意点安全衛生委員会は、社内教育や点検、パトロールなどの実施状況の伝達を経て、翌月以降における安全衛生上の議題の審議に入ります。特に重要なのが、その時の委員会での審議・決定事項の部分です。決定事項の詳細はもちろん、担当部署や実施時期なども合わせて記載することが望ましい。
安全衛生委員会は、ややもすると『伝達』を中心に開催されがちですが、その本質はやはり『意思決定』にあります。
派遣労働者を含め50人以上になる場合安全・衛生管理者の選任は必要か
派遣中の労働者の取り扱いについて通達(昭61・6・6 基発第333号)で、
①安全管理者などの選任に関して
派遣中の労働者に関しての安全管理者の選任の義務及び安全委員会の設置義務は、派遣先事業者のみに課せられているが、当該事業場の 規模の算定に当たっては、派遣先の事業場について、派遣中の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出する。②衛生管理者などの選任に関して
派遣中の労働者に関しての衛生管理者の選任の義務及び衛生委員会の設置の義務などは、派遣先事業者及び派遣元事業者の双方に課せら れているが、当該事業場の規模の算定に当たっては、派遣先の事業場及び派遣元の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出 する。つまり、派遣労働者の数を含め常時使用する労働者の数が50人を超えれば、安全・衛生管理者の選任が必要ということになる。
安全衛生委員会の活動を活性化させたいが
安全衛生委員会は、安衛法第19条で定められた組織であり機能していない状況では、事業者さらには委員会の議長にも責任があります。この場合経営首脳や現場トップの方々の考え方についても議論が必要になる。
実際に経営首脳や現場トップが安全衛生に関心を見せなければ、やはり生産ラインの充実だけが最優先され、委員会活動は有効に働かないものです。
まずは、以下の2点を提案します。
①『過去の災害事例を洗い出す』『疾病件数を調べる(休日日数)』『ヒヤリハット
事例を収集する』『判例当たる(損害賠償金額)』
・具体的例を集めて『安全衛生委員会活動の大切さ』を説明する。
②安全衛生委員会で現場巡視を行う
・現場を知ることが、あらゆる活動の基本です。委員会としての組織の一体感や
安全衛生に関しての動機づけにもつながるでしょう。あわせて委員会の開催時に、最近発生した大災害やメンタルヘルス、長時間労働などの社会的話題を提供して、委員会への地道な啓発を 続けていかなければと考えます。
安全衛生推進者の選任要件は
安衛則第12条の2で、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で「安全衛生推進者等」を選任する。
選任にするにあって一定の資格が必要です。
①大学又は高等専門学校を卒業した者で、その後1年以上安全衛生の実務に従事して経験を有する者
②高等学校または中等教育学校を卒業した者で、その後3年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
③5年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
④厚生労働省労働基準局長が定める講習を修了した者
⑤厚生労働省労働基準局長が前各号に掲げるものと同等以上の能力を有すると 認めた者
この要件を満たした者の中から選任する。なお、⑤の「厚生労働省労働基準局長が前各号に掲げるものと同等以上の能力を有すると認めた者」とは、
●安全管理者及び衛生管理者の資格を持つ者
●安全管理者の資格を有する者で、当該資格を取得したあと1年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
●元方安全衛生管理者の資格を有する者
●労働安全・衛生コンサルタント
などがあります。また、安全衛生推進者は原則として事業場に専属の者を選任することとされているが、安衛則第12条の2第2号で、労働安全・衛生コンサルタント、安全管理者又は衛生管理者の資格を有する者で、当該資格を取得した後5年以上安全衛生の実務に従事した者らを選任した場合は、専属の者でなくても構わない。
しかし、通達で、非専属の安全衛生推進者が担当する事業場数は10以内、かつ各事業場を週1回巡視できるような数を目安とする。
安全衛生計画
安全衛生の年間計画の作成上のポイントは
計画作成の前段階で、
●経営トップの方針として、労働災害の防止を計画の冒頭で明示する
●安全衛生目標として労働災害ゼロなどの数値目標をはっきり示す
●計画作成、実施の主体を決めるいかに具体的ポイントとして、
●過去の計画の内容とその実施状況の把握
●過去の労働災害や職業性疾病の発生状況、ヒヤリハット事例などを収集・分析する
●行政が実施する行事などをリンクさせて、活動を盛り上げる
●計画の実施状況を点検をする安全衛生計画の作成、実施、点検、改善という流れを作り、適切な計画を作成する。
安全衛生教育
どのような場合に職長教育が必要になるか
安衛法第60条では「事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行わなければならない」と定めています。
そして、「職長等の教育を行うべき業種」については、労働安全衛生法施行令第19条で、
① 建設業
② 製造業(イからホに掲げるものを除く)
イ 食料品・たばこ製造業(化学調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く)
ロ 繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く)
ハ 衣服その他繊維製品製造業
ニ 紙加工品製造業(セロファン製造業を除く)
ホ 新聞業、出版業、製本業及び印刷物加工業
③ 電気業
④ ガス業
⑤ 自動車整備業
⑥ 機械修理業
と定めていますので、これらの業種に該当する場合には職長教育が必要となります。
また、条文中に出てきた教育を行わなければならない「次の事項」については、
① 作業方法の決定及び労働者の配置に関すること
② 労働者に対する指導又は監督の方法に関すること
③ ①②に掲げる物のほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるものを挙げています。③の厚生労働省令で定めるものとは、安衛則第40条第1項で、
(1)作業設備及び作業場所の保守管理に関すること
(2)異常時等における措置に関すること
(3)その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること
と定められています。雇入れ時教育後、定期的な再教育は必要か
安衛則第35条では、雇入れ時と作業内容変更時における安全衛生教育を行わなければならない。
なお、雇い入れ時教育を実施した後、安全衛生教育をしなければならないという規定は、作業内容変更時以外にありません。
しかし、危険有害業務など特定有害業務など特定の職務に就いてから定期的に再教育を行うよう通達「安全衛生教育の推進について」(平3・1・12 基発第39条)が出されています。主なものとして、
①就業制限業務に従事しているもの
②特別教育を必要とする危険有害業務に従事する者
③安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者及び衛生推進者
④作業主任者、職長及び作業指揮者
などが挙げられます。期間としては『おおむね5年ごとに』、機械設備等に大幅な変更があった場合には『随時』に教育を行うこととされています。
教育内容には、作業者に対しては『当該業務に関連する労働災害の動向、技術革新の進展等に対応した事項」、管理監督者に対しては『当該業務に関連する労働災害の動向、技術革新等の社会経済情勢、事業場における職場環境の変化に対応した事項』を加えるように求めています。
雇入れ時教育での具体的教育内容はどのようのものですか
安衛則第35条1項によると
①機械等、原材料等の危険性または有害性及びこれらの取り扱い方法に関すること
②安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能及びこれらの取り扱い方法に関すること
③作業手順に関すること
④作業開始時の点検に関すること
⑤当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
⑥整理、整頓及び清潔の保持に関すること
⑦事故時における応急措置及び退避に関すること
⑧前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項安衛則第35条2項によると前項各号に掲げる事項の全部または一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項の教育を省略できる。
また、労働者の作業内容を変更した場合にも雇入れ時と同様に教育が必要になりますので注意してください。
作業方法の安全対策
ストレート屋根上での作業、どんな安全対策が必要か
安衛則第524条により、ストレート屋根の踏み抜き防止対策として、幅が30㎝以上の歩み板を設置しなければなりません。また、防網を張ったり、命綱を労働者に使用させる等の措置により墜落防止対策を講じなければなりません。
悪天候後に行う低層足場点検のポイントは
足場先行工法ガイドライン(平18・2・10 基発第0210001号)によると、
①足場部材の損傷、取り付けの状態
②足場部材の緊結の状態
③手すりの有無
④胸部の沈下
⑤控え等の補強材の取付状態
に異常がないか、具体的な点検をする必要があります。架空電線付近でのクレーンを使用する場合の安全な離隔距離の目安は
安衛則第349条では「事業者は、架空電線又は電気機械器具の充電電路に近接する場所で、工作物の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業若しくはこれに付帯する作業又はくい打機、くい抜機、移動式クレーン等を使用する作業を行い場合等において、当該作業に従事する労働者が作業中若しくは通行の際に、当該充電電路に身体等が接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずる恐れのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない」とされており、具体的には、
①当該充電電路を移設する
②感電の危険を防止するための囲いを設ける
③当該充電電路に絶縁用防護具を装置する
④(①~③の措置が困難なとき)監視人を置き、作業を監視させる
と言った項目を定めています。また、「架空電線との離隔距離」について、通達(昭50・12・17 基発第759号)で、「移動式クレーン等の機体、ワイヤーロープ等と送配電線類の充電部分との離隔距離について」以下のように指導することとされています。
①特別高圧・・・2m(ただし、6万ボルト以上は1万ボルト又はその端数を増すごとに20cm増し)
②高圧・・・・・1.2m
③低圧・・・・・1m
作業を行う場合、この離隔距離を目安にし、適切な距離を保っておく必要があります。深さ2m以上の溝の溝上部での作業の安全対策は
高所作業対策について安衛則第518条では、「高さが2m以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く)で作業を行う場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある時は、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない」としています。また、安衛則第519条では、「高さ2メートル以上の作業床の端、開口部等で労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない」と定められています。
以上から、必ずしも「地上から」高さが2m以上の場所での作業を特定していないことがわかります。ともかく、直近の下方部分からの高さが2m以上の「箇所」「作業床の端」とか「開口部」などでの作業であることが問題なのです。
地震発生後の足場の点検項目は
安衛則第567条により、強風、大雨、大雪等の悪天候もしくは中震以上の地震後において足場における作業を行うときは、作業開始前に点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければなりません。点検事項として、
①床材の損傷、取り付け及び掛渡しの状態
②建地、布、腕木等の緊結部、接続部及び取付け部のゆるみの状態
③手すり等の取り外し及び脱落の有無
④緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態
⑤脚部の沈下及び滑動の状態
などがあります。また、『中震とは、震度階級4以上の地震』『強風とは、10分間の平均風速が毎秒10メートル以上の風』『大雨とは、1回の降雨量が50ミリメートル以上の降雨』『大雪とは、1回の降雪量が25センチメートル以上の降雪』
法はあくまでも最低基準を示しているので安全のためには、地震や大雨などが基準に満たない場合でも点検を実施する事が望ましい。
安全知識豊富な作業員でも被災しないような対策は
災害防止のポイントを機械・設備面から考えると、
設備投資によって、ほとんど自動化した機械・設備を導入するとか、鉄柵や堅固な囲いを設けるなどの、ハード的措置として中長期的には意識しておく事柄です。一方、現実的な対策として、作業員の作業の質を高めることや安全に対する意識を向上させることなどがあります。要するに、「安全教育」や「意識啓発」などの、ソフト面の充実を図る。
また、災害防止対策は、現場に用意されており、実作業を通して、どのような場所、行為、時間帯などに危険が潜むかを知り、それをどのように避けるかです。
ひとつの教育方法として「災害事例に学ぶ」方法があります。あらゆる災害には、数種類の発生パターンがあります。それらの事例を暗記するくらいにする。そうすれば現場のなかで危険性や対策がイメージできるようになります。下水道工事で掘削作業、溝内の土砂崩壊防止の措置は
安衛則第369条により、まず地質や地層など、掘削箇所の状態を調べることが先決で、その結果に応じて適正な材料を使って土止め措置を講じる。
そして、実際の組立に際しては『安全』を重視した組立図を作ってそれに基づいた組み立て作業を行うこと必要になる。多くの土砂崩壊災害が、土止め措置がない状態の溝内でで被災しています。
そこで『土止め先行工法』があります。これは作業者が溝内に入る前に、土止め支保工を設置する工法で、下水道工事などの、比較的、規模が小さい現場で採用される工法です。代表的なものとして、以下2例をあげます。
『建込方式軽量鋼矢板工法』
一定の深さまで掘削機械などのより溝掘削を行い、軽鋼矢板を建て込んだ後、所定の深さまで押し込み、地上から専用の治具を使用して最上段の腹起こし及び切りばりを設置して土止め支保工を組み立てる工法。『打込方式軽量鋼矢板工法』
砂質土や湧水などがある軟弱な地盤の掘削に使用されることが多い工法。溝の幅に合わせてあらかじめ軽量鋼矢板を杭打ち機などで打ち込んだ後、最上段の切り張りを設置する深さまで掘削を行い、地上から専門の治具を使用して腹起こし及び切りばりを設置して土止め支保工を組み立てる方式。保護帽の使用期限はあるのか
保護帽の使用期限について、安衛法では特に期限を明示したものはありません。ただ、安衛則のなかに『保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと』これに該当する条文は、すべて以下の作業主任者の職務になります。
・ずい道等の掘削等作業主任者
・ずい道等の覆工作業主任者
・建築物等の鉄筋の組立て等作業主任者
・鋼橋架設等作業主任者
・木造建築物の組立て等作業主任者
・コンクリート造の工作物の解体等作業主任者
・コンクリート橋架設等作業主任者
・足場組立て等作業主任者そして『保護帽の機能の点検』については,通達で『緩衝網の調節の適否、帽体の損傷の有無、あご紐の有無等についての点検をいうものであること』(昭34・2・18 基発第101号)とありますので、これらの項目に該当するか否か、作業主任者は的確に判断しなければなりません。
なお、日本安全帽工業会では、ABS製、ポリカーボネート製帽体は購入後3年以内、FRP製帽体は購入後1年以内という試用期間を設けています。
作業において必ず損傷は出来るので、同工業会の基準を目安にしながら、事業者も、安全性の高い保護帽がきちんと使われているか、日頃から機能の点検をしておくことをお勧めします。
安全帯の使用前点検、実施すべき法的根拠はあるか
安衛則第521条第1項、同条第2項により、安全帯の点検は、『安全帯等を使用させるときに、随時』行うべきとされています。安全帯の点検については、メーカーなどが添付している取扱説明書などに点検・破棄の基準が記載されているものがあるので参考にしてください。具体的な点検項目として、
①フック
・亀裂が生じているもの
・フックの内側に1mm以上の傷があるもの
・さび(腐食)が著しいもの、又は変形しているもの
②バックル
・亀裂が生じているもの
・ベルトの噛み合わせ部が著しく磨耗しているもの
・全体にさび(腐食)が発生しているもの、又は変形しているもの
③D環
・亀裂が生じているもの
・深さ1mm以上の傷があるもの
・変形の大きいもの
④胴ベルト
・磨耗、すり切れの激しいもの
・ベルトの耳などに3m以上の損傷のあるもの
などの項目に当てはまった場合、新品と交換する必要があります。さらにロープの状態についても『キンクや形くずれの著しいもの』『溶融、変色の著しいもの』などは、衝撃により切断する恐れがありますので、早急に新しいものに取り替えるべきです。
また、月に1回程度、それぞれの点検項目に基づいた入念な点検を実施し、必要に応じて廃棄などの措置を講じる。
埋設物付近での掘削作業についての対策
掘削作業中に塀などの崩壊、あるいは埋設されているガス管などの損壊といった事故につながる可能性があるため、事前の安全対策が欠かせません。
安衛則第362条第1項、同条第2項、同条第3項で、ブロック塀やガス導管に近接した箇所で掘削作業を行う際には、あらかじめブロック塀やガス導管などの移設をする等危険を防止する措置を講じるなどの作業計画を作成し、対策を立てることが不可欠である。
架空電線付近での解体工事、感電防止対策のポイントは
安衛則第349条により、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければなりません。
①当該充電電路の移設
②感電防止のための囲いの設置
③当該充電電路への絶縁用防護具の装着
④(①~③の措置が困難な場合)監視人を置き、作業を監視させるなお、『絶縁用防護具』とは、線カバーのほか、がいしカバー、シート状カバーなどがあり、事前に電力会社に連絡して設置する必要があります。
このほか、工事開始前の実施事項から実作業までの感電防止のポイントについて、通達(昭50・12・17 基発第759号:『移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電災害の防止対策について』)では、
①送電線類との安全な離隔距離の確保(電路の電圧に応じた離隔距離の確保)
②監視責任者の配置(移動式クレーンなどを使用する作業において的確な作業指揮をとることができる監視責任者の配置)
③作業計画の事前打ち合わせ(電力会社などとの防護措置や作業方法の打ち合わせ)
④関係作業者に対する作業標準の周知徹底(関係作業者に対し、感電の危険性を十分周知させるとともに、その作業準備を定め、これにより作業が行われるよう必要な指導を行う)感電災害防止対策の柱である防護管の設置、作業計画・標準の作成、周知などを柱に、ソフト・ハードの両面から対応すべきです。移動はしごを使用したいがどんな対策が必要か
安衛則第526条では、高さ、又は深さが1.5mを越える箇所での作業を行う場合、安全に昇降する設備を設けなければならないと定めています。
また、移動はしごに関しては、同則第527条で、次の要件に適合したものでなければならないとしています。
①丈夫な構造とすること
②材料は著しい損傷、腐食等がないもの
③幅は30センチメートル以上とすること
④すべり止め装置の取り付けその他転位を防止するために必要な措置を講じること特に、左右に動きにくくするなど事前の安全対策として『すべり止め』と『転位』の防止に努める必要があります。
また通達(昭43・6・14 安発第100号)で「はしごの上方を建築物等に取り付けること、他の労働者がはしごの下方を支えること等の措置が含まれること』とされています。
安全靴の着用はどのような場合か
安全靴について安衛則第558条で定められています。しかし、どのような作業状態で安全靴を使用すればよいかの定めはありません。
事業者が作業の状況を考慮して、安全靴の着用を判断すべきです。要は、安全靴を履いていれば防げた災害をなくすことです。
重量物の運搬作業の災害防止のポイントは
腰痛予防対策は通達(平・9・6 基発第547号)が出ていますので、そこからいくつかポイントを挙げてみます。
①自動化、省力化
・適切な自動装置、台車の使用等により人力の負担を軽減することを原則とする。
②荷姿の改善、重量の明示等・荷物は、かさばらないようにし、かつ適切な材料で、できるだけ確実に把握することができる手段を講じて、取り扱いを容易にする。
・できるだけ取り扱うものの重量を明示する。
③作業姿勢、動作
・床面等から荷物を持ち上げるときは片足を少し前に出し、膝を曲げ、腰を十分に降ろして当該荷物をかかえて、膝を伸ばすことによって立ち上がる。
・できるだけ身体を対象物に近づけ、重心を低くするような姿勢をとる。
・腰をかがめて行う作業を排除するため、適切な高さの作業台を利用する。
・荷物を持った場合は、背を伸ばした状態で腰部のひねりが少なくなるようにする。
④取扱時間
・取り扱う物の重量、取り扱う頻度、運搬距離、運搬速度等作業の実態に応じ、小休止・休息をとる。他の軽作業と組み合わせる等により、重量物取扱時間を軽減する。次に『重量物の取り扱い重量』については、
☆満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う重量は55kg以下にする。また、当該男子労働者が、常時、人力のみにより取 り扱う場合の重量は、当該労働者の体重の概ね40%以下となるように努める。
☆上記の重量を超える重量物を取り扱わせる場合は、2人以上で行わせるように努め、この場合、それぞれの労働者に重量が均一にか かるようにする。以上のように、できるだけ重量物運搬作業を機械設備などによりなくしていき、それが困難な場合は取り扱う重量物の重量が前述の目安を越えないようにする。その上で、正しい荷の持ち上げ方を徹底する事が必要である。
作業帽や作業服の着用に法的定めがあるか
安衛則第110条で『労働者の頭髪又は被服が機械に巻き込まれるおそれのあるときは、労働者に適当な作業帽又は作業服を着用させなければならない』と定めた条文が法的根拠になります。
一般的に作業服の着用目的を『汚れてもいいため』と認識している方も多い。しかし、作業帽や作業服の着用の法的な目的は『危険防止』となる。
さらに、だらしない服装は、災害に巻き込まれるだけでなく、職場全体における作業者の安全に対する意識も希薄なものになってしまう恐れがある。整理整頓が徹底されていない職場で災害が発生するのと同じ意味合いを持つため、常日頃から作業者の服装の乱れに気を配る必要があります。
高年齢者の労働安全衛生対策は、
たとえば、腰痛防止対策としては、
①運搬作業を自動化あるいは複数の作業員による作業とする
②前屈などの姿勢が長時間続かないよう、作業位置などを改善する
③レイアウトを改善し、運搬距離を短縮するその他、はしごや脚立を使った昇降を伴う作業や滑りやすい床面での作業などはできるだけ避けるようにし、また、床面の凸凹をなくす(バリアフリー化)。視聴覚面では、標識や作業マュアル(高齢者向けの作業マュアル)などの文字を大きくする、あるいは全体照明・局所照明を明るくするなどの措置などにより、心身の機能の低下をフォローする対策が重要である。
「かかり木処理」作業において具体的に講ずるべき安全対策は
安衛則第36条第8号及び8号の2の規定により、「かかっている木の胸高直径が20cm以上であるものの処理の業務」及び「チェンソーを用いておこなうかかり木の処理の業務」などに従事する労働者に対し、特別教育を実施することとしています。
平成14年に策定された「かかり木の処理作業における労働災害防止のためのガイドライン」のポイントとして、
①事前調査の際に、かかり木に係る事項についても実地調査を行い、その結果に基づき、携行が必要な機械器具等を決定するなど、必要な準備をおこなうこと
②適切な機械器具等の使用、労働者の確実な退避等安全な作業方法を決定すること
③かかり木を一時的に放置せざるを得ない場合には、講ずべき措置を徹底することちなみに、①の「事前調査」では、伐木作業を行おうとする林分について、事前調査を行う際に、立木の径級、林分の密度、伐倒方向、枝がらみなどの状況を実地に調査する。また②の「安全な作業方法」とは、退避場所の選定、かかり木の速やかな処理、適切な機械器具などの使用について求めたものです。
また、同ガイドラインでは、禁止事項として、立木の投げ倒しや肩担ぎ等を、またかかり木を一時的に放置する場合の、標識の掲示などの措置の実施を求めています。
作業環境
はい作業における「照度」に具体的な基準があるのか
安衛則第434条で「事業者は、はい付け又ははいくずしの作業を行う場所については、当該作業を安全に行うために必要な照度を保持しなければならない」と定めています。ここでいう「必要な照度」については、通達(昭43・1・13 安発第2号)
①はい付け又ははいくずしの作業が行われている場所・・・・20ルクス以上
②倉庫内であって労働者が作業のため通行する場所・・・・・8ルクス以上
③屋外であって労働者が作業のため通行する場所・・・・・・5ルクス以上
上記から、はい作業そのものはもちろん、それに付随する通行時などの安全のため、必要な照度を確保しなければなりません。内燃機関を有する機械を使用する際の注意点は
安衛則第578条では、自然換気が不十分な場所では内燃機関を使用しないことが基本となりますが、自然換気が不十分な場所で内燃機関を有する機械を使用する場合には、十分な換気を行わなければなりません。この換気が不十分な場合に、一酸化炭素中毒を招くため十分な知識を持った者を作業に当てることが必要となります。
その点について「建設業における一酸化炭素中毒予防のためのガイドライン」(平10・6・1 基発第329号)では、一酸化炭素中毒に関する知識を有する者の中から「作業責任者」を選任し、
①作業手順書(作業手順書の作成者、作業を行う日時、作業の内容、作業場所、労働者の数、使用する一酸化炭素中毒発生機材、換気の方 法及び使用する換気設備、使用する呼吸用保護具、一酸化炭素濃度及び酸素濃度の測定機材
の種類、測定方法及び測定時期、一酸化炭素 のガス検知警報装置の種類、練炭使用の場合その保管方法、内燃機関使用の場合その保守点検状況、作業の手順、緊急時の対応を記載) を作成し、これに基づき業務に従事する労働者を指揮する。
②関係箇所に作業関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を見やすい箇所に表示する
③労働者が呼吸用保護具を適切に使用しているか確認する
④作業管理、作業環境管理、警報装置、呼吸用保護具、健康管理、労働衛生教育について、実施状況を確認し、必要に応じて事業者に報告すること
などの措置を行わせ、必要に応じて改善等の措置を講ずることとしています。作業責任者は、特定の資格を条件としないが、一酸化炭素中毒予防に関する十分な知識(一酸化炭素の有害性とその予防措置、作業環境の改善方法、呼吸用保護具に関する知識、経験を有する者)を有する者から選任することが望ましい。
事務所の作業環境測定の頻度が緩和される条件は
事務所の作業環境測定については、以前は一定の要件を満たす事務所について2カ月ごとに1回、定期に、一酸化炭素及び炭酸ガスの含有率を測定することとされていました。
平成16年の事務所則改正により、「当該測定を行おうとする日の属する年の前年1年間において、当該室の気温が17度以上28度以下及び相対温度が40%以上70%以下である状況が継続し、かつ、当該測定を行おうとする日の属する1年間において、引き続き当該状況が継続しない恐れがない場合」について、室温並びに外気温、相対湿度について、現行の「2カ月に1回」から「春(3~5月)または秋(9~11月)」のいずれか1回、「夏(6~8月)」「冬(12~2月)」の各1回の、年3回の測定をすることとされました(事務所則第7条)。
健康診断
メンタルヘルス関係の相談機関
メンタルヘルス関係の相談機関
メンタルヘルス関係の相談ができる機関として「地域産業保健センター」があり、相談にかかる費用は無料です。
地域産業保健センターは、医師会が運営するもので常時50人未満の労働者を使用する事業場が利用できます。業務内容としては「健康相談窓口の開設」「個別訪問による産業保健指導の実施」「産業保健情報の提供」等を行っています。
健康相談窓口では、医師等が健康相談に応じ、具体的相談内容としては、メンタルヘルスに関すること、健康診断に基づいた健康管理などがあります。給食従業員に対して健康診断は必要か
事業者は、事業に附属する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、雇入れの際又は当該業務への配置替えの際に、検便による健康診断をおこなわなければならない。
なお、定期的に行う必要はありません(安衛則第47条)。特定業務従事者の健康診断項目にはどのようなものがありますか
事業者は、多量の高熱物体を取り扱う業務、身体に著しい振動を与える業務、強烈な騒音を発する場所での業務、坑内業務、深夜業を含む業務等の一定の業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6カ月以内ごとに下記の診断項目について医師による健康診断をおこなわなければならない(安衛則第45条)。
健康診断項目 ① 既往症、業務歴の調査 ② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 ③ 身長、体重、視力及び聴力の検査 ④ 胸部エックス線検査、喀痰検査(1年以内ごとに1回) ⑤ 血圧の検査 ⑥ 貧血検査 ⑦ 肝機能検査 ⑧ 血中脂質検査 ⑨ 血糖検査 ⑩ 尿検査 ⑪ 心電図検査 定期健康診断の診断項目にはどのようなものがありますか
事業者は、常時使用する労働者を対象として、1年以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断をおこなわなければなりません(安衛則第44条)。
定期健康診断は、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるとき省略できる。定期健康診断項目 省略項目 ① 既往症、業務歴の調査 ② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 ③ 身長、体重、視力及び聴力の検査 身長・・20才以上の者
聴力・・45歳未満の者(35歳及び40歳の者を除く)は、医師が適当と認める聴力検査に代えることができる④ 胸部エックス線検査、喀痰検査 喀痰検査・・胸部エックス線検査で異常のない者 ⑤ 血圧の検査 ⑥ 貧血検査 40歳未満の者(35歳の者を除く) ⑦ 肝機能検査 40歳未満の者(35歳の者を除く) ⑧ 血中脂質検査 40歳未満の者(35歳の者を除く) ⑨ 血糖検査 40歳未満の者(35歳の者を除く) ⑩ 尿検査 尿中の糖の有無の検査・・血糖検査を受けた者 ⑪ 心電図検査 40歳未満の者(35歳の者を除く) 雇入れ時の健康診断の診断項目は決まっているのでしょうか
事業者は、常時使用する労働者を雇入れるときは、医師による健康診断をおこなわなければなりません(安衛則第43条)。
この場合、常時使用する労働者とは、「期間の定めがない労働者のほか、期間の定めのある労働契約によって使用される者であっても1年『一定の有害業務に従事する場合は6ヵ月』以上使用される予定の者も「常時使用する労働者」に該当する。
また、パートタイム労働者については、週所定労働時間が当該事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者は、「常時使用する労働者」に該当する。
なお、4分の3未満であっても概ね2分の1以上である者については、健康診断を受けることが望ましいとされています。1 既往歴、業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の検査
6 貧血検査
7 肝機能検査
8 血中脂質検査
9 血糖検査
10 尿検査
11 心電図検査*雇入れ時の健康診断は、原則として診断項目の省略は認められていない。ただし、医師による健康診断を受けてから3ヵ月以内の者が、その結果を証明する書類を提出した場合は、その項目を省略できる。
特定業務従事者の健康診断はどのような業務が該当するか
安衛則第13条第1項第2号により、
1.多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
2.多量な低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
3.ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
4.土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛来する場所における業務
5.異常気圧下における業務
6.さく岩機、鋲打機などの使用によって、身体に著しい振動を与える業務
7.重量物の取り扱い等重激な業務
8.ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9.坑内における業務
10.深夜業を含む業務
11.銀、砒素、黄りん、弗化水素、塩酸、硝酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
12.鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン その他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
13.病原体によって汚染のおそれが著しい業務
14.その他厚生労働大臣が定める業務上記に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に健康診断を行わなければなりません。
短時間勤務の夜勤労働者に健康診断の実施義務はあるか
安衛則第43条、第44条などで、『常時使用する労働者』に対して、雇入れ時健康診断、定期健康診断を実施することと定めています。常時使用する労働者と見られる短時間労働者に関しては、通達(平5・12・1 基発第663号)により、期間の定めのない労働契約を交わした者ないしは1年以上の労働契約を継続予定のものであり、かつ同種の労働者の4分の3以上の労働時間を就労している者については、雇入れ時健康診断や定期健康診断を行わなければなりません。
したがって、『同職種の労働者と同じ作業を、ほぼ同じ時間行う』短時間労働者に対しては、各種の健康診断を実施しなければなりません。
一方『深夜勤務を行う』短時間労働者については、安衛則第13条第1項第2号に掲げる業務に該当するため、6ヵ月以上の反復契約が一要件になっています。その要件を満たしたうえで、同種の労働者の4分の3以上の労働時間を就労していれば、6ヵ月以内ごとに1回定期健康診断を実施しなければならない。
パートタイマー労働者に対して定期健康診断実施義務はあるか
通達では、
1.期間の定めのない労働契約により使用される者である(期間の定めのある労働契約により使用される者であって当該契約の更新により1 年以上使用される事が予定されている者及び当該労働契約の更新により1年以上引き続き使用される者を含む)。
なお、安衛則第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる「特定業務」に従事する短時間労働者にあっては6月2.その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
さらに同通達で、「なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場に
おいて同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上であるものに対しても一般健康診断を実施する事が望ましい」としています。雇入れ時の健康診断を3ヵ月後の定期健康診断に換えてよいか
安衛則第43条により、新たに雇入れる者が3ヵ月以内におこなった健康診断の結果を証明する書面を提出し、その項目が足りていれば雇入れ時の健康診断を実施する必要はありませんが、それができない場合は、雇入れ時の健康診断を実施する事が必要です。
また、通達で、「雇入れの際とは、雇入れの直前または直後をいい」「雇入れ時の健康診断は、常時使用する労働者を雇入れた際における適正配置、入職後の健康管理に資するための健康診断であること」。
以上のことから、雇入れ時健康診断を3ヵ月後の定期健康診断に換えることができない。
なお、雇入れ時の健康診断実施後1年以内におこなわれる定期健康診断では、健診項目の省略が可能になります。
育児休業中の労働者に対し、定期健診を実施する義務はあるか
通達(平・3・13 基発第115号)
1.休業中の定期健康診断について
事業者は、定期健康診断を実施すべき時期に、労働者が育児休業、療養等により休業中の場合には、定期健康診断を実施しなくてもさしつかえない。2.休業後の健康診断について
事業者は、労働者が休業中のために健康診断を実施しなかった場合には、休 業後、速やかに当該労働者に対し、定期健康診断を実施しなければならない。労働基準監督署への定期健康診断結果報告はどのような場合に必要か
「健康診断結果報告書」については、安衛則第52条で、常時50人以上の労働者を使用する事業所は遅滞なく「定期健康診断結果報告書」を労働基準監督署に報告することになります。
また、健診結果の記録については、事業者は健康診断の結果に基づき「健康診断個人票」を作成し、これを5年間保存しなければなりません(安衛則第51条)。
ちなみに有機溶剤業務や鉛業務などに従事する者が受ける「特殊健診」では、事業場に規模に関係なく、労働基準監督署への健康診断結果報告が必要となります(有規則第30条の2、鉛則第55条など)。
深夜業従事者の自発的健診に対する助成対象の要件はどのようなものですか
安衛法においては、深夜業に常時従事する労働者に対して、6ヵ月以内ごとに1回健康診断(特定業務従事者の健康診断)を実施することを定めています。
自発的健康診断制度は、深夜業に従事する人が自らの健康状態に不安を感じ、次回の健康診断まで待てないような場合に自らの意思で健康診断を実施し、その結果を事業主に提出できるようになった制度です。事業主は、提出結果に基づき、適切な事後措置を実施する必要があります。
この自発的健康診断は、一定の要件に該当する場合に助成が行われます。具体的には、
1. 常時使用される労働者
2. 自発的健康診断を受診する日前6ヵ月の間に1ヵ月当たり4回以上(過去6ヵ月で 合計24回以上)深夜業に従事した者
3.当該年度にこの助成金を支給を受けたことがない者といった要件に該当する者が助成の対象になります。助成の金額は、自発的健診に要した費用の4分の3に相当する額ですが、4分の3に相当する額が7,500円を超える場合に支給額は7,500円となります。会社指定の定期健康診断について、一部の従業員が個人情報であるため定期健康診断を拒んでいます。どのようにすればよいでしょうか
安衛法第66条の5では、健診結果に基づいて医師から意見を聴き
1 就業場所の変更 2 作業の転換 3 労働時間の短縮 4 深夜業の回数の減少 5 作業環境測定の実施 6 施設・設備の設置・整備などの措置を講ずることとされており、また、同条第66条の7では、健診結果から、特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者には医師または保健師による保健指導を行うように努めることとされています。ところが、健康診断の結果は「個人情報」であるため会社に知られたくないという労働者も出てきます。
この点について、安衛法第66条第5項で、事業者には労働者に健康診断の受診義務を課しているものの、必ずしも会社指定の医療機関や健診機関で受診しなくてもよい。
ただ、安衛則第50条では、「法第66条第5項ただし書きの書面は、当該労働者の受けた健康診断の項目ごとに、その結果を記載したものでなければならない」と定めています。
そこで、個人的の健康診断を受診した場合でも、法定の受診項目については、やはり提出すべきです。
まずは、健康診断は健康確保のために行うことを、時間をかけて労働者に納得してもらうことが先決でしょう。
一般健康診断にはどのような種類がありますか
安衛則第66条では、事業主に、労働者に対する健康診断の実施義務を課しています。義務付けられた健康診断は、
1 雇入れ時の健康診断・・常時使用する労働者を雇いいれる際
2 定期健康診断・・常時使用する労働者に対して。1年ごとに1回以上、定期的に行う健康診断
3 特定業務従事者の健康診断・・安衛則第13条に掲げた業務に配置された際、及 び6ヵ月以内ごとに定期的に一般の定期健康診断と同じ項目の健康診断を行う。
4 自発的健康診断・・安衛法においては、深夜業(午後10時から翌日5時の間)に常時従 事する労働者に対して、6ヵ月以内ごとに1回健康診断(特定業務従事者の健康診断)を実施することを定めています。
5 海外派遣労働者の健康診断・・労働者を6ヵ月以上海外に派遣しょうとする時はあら かじめ定期健康診断の項目を内容とした健康診断を行う
6 通達に示された健康診断・・行政通達でその実施が促されている健康診断として、
☆キーパンチ作業
☆チェンソー使用による身体に著しい振動を与える業務
☆チェンソー以外の振動工具(さく岩機、ピッチングハンマー等)の取り扱い業務
☆紫外線、赤外線にさらされる業務
☆地下駐車場における業務
☆VDT作業(VDT作業常時従事者)
☆重量物取り扱い業務、介護作業等、腰部に著しい負担がかかる作業等
粉じん作業
金属の粉じんが床に飛散し、たい積した粉を清掃したいが
粉じん則第24条第1項では「事業者は、粉じん作業を行う屋内の作業場については、毎月1回以上、清掃を行わなければならない」としています。ここでは、特に清掃方法について明示していないので、例えば「ほうき」による清掃を、作業終了後に行うなどのルールを作り、実行します。ただし、このような場合でも、清掃実施者が粉じんを吸引する危険性があります。そのため通達は(昭53・7・26 基発第82号)で、「粉じんマスク(使い捨て式でも十分)等着用しなければ、はたきをかけたり、ほうきで掃いたりさせてはいけない」としています。
また、粉じん則第24条第2項では「1か月以内ごとに1回、定期に、真空掃除機を用いて、又は水洗いする等粉じんの飛散しない方法によって清掃を行わなければならない」とし、定期的かつ有効な方法での実施を求めています。
ここでいう「水洗いする等」の「等」には、「水で湿らせた新聞紙、茶がら若しくは木くずをまいて掃くこと、又は、濡れたモップで床をふくことがあること」と言っています。
いずれにしても、粉じん対策としては、まず、粉じんを出さないことから手をつけていき、その一環として清掃方法も時期や方法を考えていくというスタンスで対処していきましょう。
最後に、「色分け以外の方法」については、通達(平13・7・16 基発第634号)では、「色分け以外の方法とは、当該区分を見やすい文字で記載する等の方法をいう」としています。
アーク溶剤作業
アーク溶接作業について、どんな粉じん対策を講ずるか
アーク溶接作業は、粉じん則第5条で「事業者は、特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う屋内事業場については、当該粉じん作業に係る粉じんを減少させるため、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じなければならない」とされています。
さて、具体的に講ずべき措置として、「全体換気装置」は、動力によって職場全体の空調を行うものです。この場合、必要能力は粉じんの発散程度、作業場の構造、作業者の配置・作業時間などにより様々ですから、適宜粉じんの濃度を測ることが肝要でしょう。
一方、この全体換気と同等以上の措置」が謳われていますが、この点について、各通達が「粉じん発生源の密封化、湿潤化、局所排気装置の設置等」(昭54・7・26 基発第382号)、「局所排気装置、プッシュプル型換気装置、ニューム吸引トーチの設置等」(平15・5・29 基発第0529004号)など示されています。
「発生源の密封化」は、粉じんを発生させないようにする者で、有効な対策であるが、機械・設備の大きな改善を伴う点で難しさがあります。「局所排気装置」は、粉じんの発生源ごとに設置するもので、一般に、作業点近くにフードを設けます。可搬型のものも出回っており、広く普及しています。特に排気の際に除じん処理することができるタイプが多く、環境保護に有効なものも少なくありません。
また、「プッシュプル型換気装置」は、吸気と送気を同時に行うシステムを備えた換気装置で、「湿潤化」は粉じんの発生源に散水するなどの措置を言います。
これらの中から、現場に合わせて適切な措置を講ずるべきでしょう。
有機溶剤作業
有機溶剤業務での色分け区分とは
有機溶剤中毒予防規則第25条第1項では、「作業中の労働者が有機溶剤等の区分を容易に知ることができるよう、色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示しなければならない」と定めています。
そして、どのような色に分けられるかは、同条第2項で、
1 第1種有機溶剤等・・・赤
2 第2種有機溶剤等・・・黄
3 第3種有機溶剤等・・・青
また、通達(昭35・10・31 基発第929号)では、「本条の規定は、労働者に対して、その現に取り扱っている有機溶剤等の区分を知らしめることを目的とするものであるから、同一作業場において二以上の有機溶剤業務を行い、区分の異なる有機溶剤等を取り扱っている場合は、それらの区分を一括表示することなく、それぞれの業務に従事する労働者が自らの取り扱っている有機溶剤等の区分を知るように表示すべきである」としていますので注意ください。次に表示方法については、同通達で「所定の色を持って着色されたものであれば、旗、板、紙等のいずれによるかを問わないが、労働者が容易に識別しうる程度の鮮明さ及び大きさをもつものでなければならない」とされています。
また、通達(昭53・8・31 基発第479号)では、「有機溶剤等の区分の表示は、当該区分に応じた色の他に、当該区分を文字で記載することが望ましい」とされています。
最後に、「色分け以外の方法」については、通達(平13・7・16 基発第634号)では、「色分け以外の方法とは、当該区分を見やすい文字で記載する等の方法をいう」としています。
異なる工場間で有機溶剤作業主任者の兼務は可能か
通達(昭53・8・31 基発第479号)によると、
1 有機溶剤作業主任者は、安衛法第14条の規定に基づき、作業区分に応じて選任が必要であるが、具体的には、各作業場ごと (必ずしも単 位作業室ごとに選任を要するものではなく、有機則第19条の2「有機溶剤作業主任者の職務」の遂行が可能な 範囲ごと)に選任することが 必要であること。
2 「選任」に当たっては、その者が有機則第19条の2に掲げる事項を常時遂行する事ができる立場にある者を選任することが必 要である。有機則第19条の2の職務とは、
1 作業に従事する労働者が有機溶剤により汚染され、またはこれを吸入しないように、作業方法を決定し、労働者を指揮するこ と
2 局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置を1月を超えない期間ごとに点検すること
3 保護具の使用状況を監視すること
などが定められています。実際には、作業場(工場)が異なっても、工場間の行き来があり、作業主任者の職務が適切に遂行できる作業範囲ならば、有機溶剤作業主任者が2つの工場を兼務する事も可能でしょう。
工場内の通路をペンキで引く場合に有機溶剤対策を講じる必要があるのか
有機則第5条で、屋内作業上で有機溶剤業務を行うときは、蒸気の発散減を密封する設備や局所排気装置などを設けなければなりません。
しかし、有機則第8条では、「臨時に有機溶剤業務を行う場合の適用除外等」を定めており、「臨時に有機溶剤業務を行う事業者が屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所における当該有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、第5条の規定は、適用しない」となっています。
条文中に出てきた「臨時に有機溶剤業務を行う」については、通達(昭53・12・25 基発第707号)で、「当該事業場において通常行っている本来の業務以外のほかに、一時的必要に応じて本来の業務以外の有機溶剤業務を行うことをいう。したがって、一般的には、当該有機溶剤業務に要する時間は短時間であるといえるが、必ずしもそのような場合に限る趣旨ではないこと。例えば、有機溶剤等を用いて作業場の労働者が行う場合は、一般的には「臨時に有機溶剤業務を行う」場合に該当する」としています。
つまり、屋内作業場のタンク内部以外の場所で、「臨時」に行われる作業についてはこれらの措置を講じる必要がないということになります。
ですから、工場内の通路をペンキで引く場合は「臨時に行われる作業」と考えられますので、法的には特段の措置は必要ありません。
しかし、窓を開けて作業をするなど換気には十分注意し、換気の悪い場所での作業が長時間に及ばないように注意する必要がある。
その他
【送検事例】配水管敷設工事でドラグショベルに轢かれる
【送検事例】
作業状況
1 災害発生当日は、午後7時50分頃A社から現場責任者YとXを含む作業員6人(すべてB社からの違法派遣)が集まり、打合せなどを行った後、午後9時頃から作業が開始された。
2 当日の作業は、ドラグショベルやコンクリートカッターなどでアスファルト部分を剥がした後、新しい配水管を敷設し、土を埋め戻した後、その上をアスファルトで舗装するもの。これを半日で終わらせる予定だった。
3 作業中は、道路を通行止めとし、2人の警備員が現場に配置され、車両が入らないよう誘導を行っていた。午前1時頃、Xらは、既設配水管の撤去作業を終えた。その後、新しい配水管を敷設し、掘削土の埋め戻し作業を行った。
4 午前5時25分頃、ドラグショベルでアスファルトガラをトラックに積み込む作業を行っていたときのことだった。ドラグショベルを更新した際に誤ってXを轢いてしまって。Xは病院に運ばれたが右足を切断する重症を負った。災害原因
1 ドラグショベルに接触に接触するおそれがあったにもかかわらず、その稼動範囲内に作業員を立ち入らせて作業を行わせた。
2 A社の現場責任者Yは、ドラグショベルには近づかないよう口頭で注意しただけで具体的な安全対策を講じずに作業を行わせた。
3 このドラグショベルは、後方をモニターで見ることができるようになっていたが、災害発生当日は電源が切られモニターが使用されていなかった。被疑者と違反条文
所轄の労働基準監督署は、以下の法令違反の疑いで書類送検した。
■ 1次下請A社とA社現場監督Y
・ 安衛法第20条(機械等による危険防止措置)第1号
・ 安衛則第158条(接触による危険の防止)第1項
・ 労働者派遣法第45条第3項災害防止対策
1 ドラグショベルの運転手には死角があり、また作業者も常に周りに注意を払って作業を行うことは難しい。したがって、ドラグショベルの稼動範囲内の立入禁止措置や、作業者を立ち入らせる場合の誘導員の配置等の接触防止措置を講じる。
2 作業開始前に作業段取りの確認やKYTなどを盛り込んだTBMを実施し、安全確保への意識向上を図る。最低賃金額のチェック方法
1 最低賃金額には、次の賃金は含みません。
① 臨時に支払われた賃金(結婚手当など)
② 1カ月を超えて支払われる賃金(賞与など)
③ 所定労働時間を越える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
④ 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
⑤ 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を越える部分(深夜割増賃金など)
⑥ 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
2 最低賃金の計算方法
(1)時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
(2)日給の場合
日給÷1日平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
(3)月給の場合
月給÷1カ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
(4)上記(1)、(2)、(3)の組み合わせの場合
例えば、基本給が時間給で各手当(職務手当など)が月給の場合は、それぞれ上記(1)、(3)の式により時間額に換算し、それらを合計したものを最低賃金額(時間額)と比較します。
業務中のケガを誤って健保で治療。途中で労災保険へ切り替えられるか
健康保険における保険給付は「業務外の傷病」に限っており、業務上の事由による傷病については労災保険で取り扱うことになります。
もし、被災した従業員が労災保険が適用になることを知らずに健康保険給付による治療を受けた場合には、健康保険を所轄する健康保険組合及び労災保険を所轄する労働基準監督署のいずれにも申し出て、その指示にしたがって労災保険へ切り替えることになります。
この場合、早期の場合には、誤りを医療機関に説明をして健康保険から労災保険へ切り替えることができる場合があります。
まず、医療機関に相談することも必要になります。
健康保険で受診した費用がすぐに精算して貰えない場合は、健康保険の立替分(自己負担額以外の7割)を支払います。
この領収書と労災保険「様式第7号」とを合わせて所轄労基署へ提出すれば、労災保険から治療費の10割が支給されます。
過重労働による健康障害予防の対策推進のポイントは
時間外労働が100時間を越える労働者が、疲労の蓄積を感じて申し出てきた場合、医師による面接指導を行う必要があります。
したがって、この法に則した対策が必要になります。つまり、所定労働時間を大きく超過するような仕事をなくすことが、本質的な対策になります。
そこで、会社として健康を害する危険性がある長時間労働を無くす方針を打ち出すことが第一である。さらに必要なのは現場で指揮命令する立場の者の、健康の理解です。現場では、生産性を追うあまり、健康や安全がないがしろにされることを防ぐためにも現場管理者に対する健康教育が不可欠になります。
休業1日の災害は死傷病報告書の提出は必要か
安衛則第97条第1項では、「労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業した時は、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」と定められています。
同時に同条第2項では、「前項の場合において、休業の日数が4日に満たない時は、事業者は、同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間における当該事実について、様式第24号による報告書をそれぞれの期間における最後のつきの良くつき末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」としています。
したがって、休業の日数が1日でも、四半期に一度、所定の様式に記載して所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
たとえ軽微な災害であっても、その災害について適切に報告させ、記録・保存することが大切です。
『交通KYサイクル』とは、
まず、会社のトップが交通事故防止を徹底する方針を打ち出し、それを担保するため、組織として役割や責任を明確にすることです。そして全社一丸の姿勢で臨むことが、交通事故防止に適した職場風土を産む。その中で、KY活動は、現場での事故防止の具体的活動の中心とすることが望ましい。
なお、『交通KYサイクル』は、中央労働災害防止協会ゼロ災推進部が提唱しているもので、交通事故の防止活動を一定のサイクルの中で有機的に回していこうとするものです。以下、同協会ゼロ災推進部の取り組みから、交通事故の3本柱として、
①ラインによる『運転管理』
②定期的な『運転適性検査』
③事業場全員の『安全教育』
を挙げています。そして、これを日々実践していく中での核に、KYを据えようという考えが出てきました。車両の『運行前』『運行中 』『運行後』にKYを行う。工事の解体工事を行うが、発注者として実施すべき事項は
国土交通省は解体工事に関するガイドラインのなかで、工事の『発注者及び施工者』を主体に、「解体対象建築物の構造等を事前に調査、把握するとともに、事故防止に十分配慮した解体工法の選択、施工計画の作成を行うこと」
「大規模な建築物の解体工事における事故の影響、責任、解体工事に係る技術の必要性等を十分認識し、関係法令を遵守するとともに適切な契約、施工計画の作成を行うこと」
といった配慮を求めています。建築当時あるいは改修当時の記録(建屋の設計図や改修工事に関する図面の提出)を発注者が施工者に提出し、発注者と施工者が協力して作業計画書を作り、安全に期することが肝要です。
在来型の手法でリスクマネジメントを行いたいが
リスクマネジメントは、災害の発生を予見して、問題が発生する前に対処しておくことである。
リスクマネジメントとは、職場に存在する『危険有害要因』を洗い出して、災害に発展するのを防ぐ、あるいは災害発生の可能性を低減させることである。
そうすると『ヒヤリハット活動』も十分に的を射たものである。実際に、この手法を取り入れている事業場では、作業者が実際に体験したヒヤリハット事例を報告させ、必要に応じて改善していくという活動が多いようです。
また、安全パトロールで危険有害要因を洗い出して、事前に対処するものであるため、これもリスクアセスメントに当たる活動といえる。すなわち、安全パトロールに「チェックリストを活用」して作業方法や機械・設備の状態、環境状況の現状確認から問題点を改善する必要がある。
建設工事に係る『近隣対策』
トラブルを避けるために、近隣住民との事前の話し合い(説明会)を開催することや工事施工中においても継続的に配慮することが『近隣対策』のポイントといえる。以下に、近隣住民らに対しての配慮すべき事項として、
①道路使用関係
道路の占有許可・使用許可の有無や通行者の安全対策、工事用車両による交通
傷害の有無、工事用車両のタイヤの洗浄、現場周辺の清掃・ 散水など
②公衆の安全関係
仮囲いや飛来落下物の養生、現場出入り口の安全確保など
③騒音、振動関係
特定建設作業の届け出や騒音・振動作業の近隣への事前周知、機械の設置位
置や作業時間帯の配慮など
④工事概要や作業内容の周知
作業内容の説明や苦情の対応窓口の確認、作業時間延長の際の措置、現場内の規律(言葉遣いなど)の確保、現場着工前後のあいさつなどまた、日頃からコミュニケーションを図ることを心がけ、景観との調和(仮囲いのペイントなど)といった細かな点に配慮することが望ましい。
事業場での緊急時対策に安衛法令上の規定があるか
日常的緊急時の対策もシミュレーションをしておく事が大切です。
安衛則第546条第1項、安衛則第548条で定めています。
ここでは『化学設備の非定常作業における安全衛生対策のガイドライン』(平8・6・10 基発第364号)の中で爆発・火災などの緊急事態への対応策として、
①緊急対応マニュアルの作成
イ 緊急事態発生時の連絡方法
ロ 爆発、火災、危険物・有害物等の漏えい等に対する対応措置及び指揮・命令系統
②消火栓、消火器、洗顔器、シャワー等の設置
③爆発、火災、危険物・有害物等の漏えい等の想定訓練、負傷者に対する救急 措置訓練の実施
④取り扱う有害物の情報の産業医、救急措置を依頼する医療機関等への事前連絡
などの措置を講じるよう求めています。このほか、建築基準法や消防法でも、緊急時のための警報装置や避難設備について詳しく定めています。
安全管理手法の「4M4E手法」とは何か
「4M4E」とは、事故の原因を・対策を整理するための方法として、アメリカ国家航空宇宙局(NASA)などで採用されています。
わが国では、鉄道業界や医療の現場において誤りを防ぐためのリスクマネジメントを進めるための手法として用いられています。
①4M
事故の具体的要因をあらわすもの
・「MAN」(人間)
・「MACHINE」(物、機械)
・「MEDIA」(環境)
・「MANAGEMENT」(管理)②4E
事故の対策をあらわすもの
・「EDUCATION」(教育)
・「ENGINEERING」(技術・工学)
・「ENEORCEMENT」(強化・徹底)
・「EXAMPLE」(模範・事例)
と言った意味を持ちます。そして、「4M4E」とは、事故の具体的要因と対応策をマトリックス表にし、まず事故の具体的な要因を記した後、教育、技術、強化・徹底、模範・事例の面から対応策を記すものです。
マトリックス表により、4つの「M」で事故要因を分析し、4つの「E」で対策を立てることで、原因と対策をより明確にすることができます。たとえば、過去の災害事例についてマトリックスを作成し、事故要因などの分析結果を記入し各委員が発表するなど、関係作業者らに周知徹底し、安全意識の啓蒙のために役立てることが望まれます。
さらに、災害防止のためのマニュアル作りや安全教育の実施などを当して、より有効的に活用すべきです。
車両系建設機械の特定自主検査は社内で実施できるか
安衛法第45条第1項で『定期自主検査』の規定があります。対象の機械については、1か月、6日月、1年ごとに一定の項目について検査を行います。
そして、これらのうち特に技術的に検査が難しい一定の機械について『特定自主検査』の実施が必要になります。対象となる機械類は、
①動力プレス ②フォークリフト ③車両系建設機械 ④不整地運搬車
⑤高所作業車そして、この特定自主検査の実施を自社で行う場合は、安衛法第45条第2項により社内に厚生労働省令で定める資格を持つ者が必要になります(対象となる機械ごとに定められている)。かつ厚生労働大臣が定める研修を修了した者などがいれば特定自主検査を行うことができます。
安全標識の色にはどんな区分けがあるのか
『黄』の意味又は目的は『注意』。(使用例:注意標識、クレーン、床面の端など)
『黄赤』の意味又は目的は『危険』。(使用例:危険標識、目盛板の危険範囲など)
『赤』の意味旗は目的は『防火』『禁止』『高度の危険』。(使用例:禁止標識、火薬類の表示、緊急停止ボタンなど)
こうした規格に準じた標識を設置することで、より多くの人が共通の危険を認識できるので、できるだけ統一して全社的に周知徹底する。
特定元方事業開始報告はどのような現場で必要となるか
安衛則第664条により、特定元方事業者(法第30条第2項又は3項の規定により指名された事業者を除く)は、特定元方事業開始報告を当該作業の開始後、遅滞なく、当該場所を管轄する労働基準監督署長に報告しなければならないとしています。
また、通達(昭42・4・4基収第1231号)から労働者数が常時10人以上であれば、特定元方事業開始報告が必要であり、また、様式については特段の定めがありません。